研究概要 |
膜の表裏面間で液晶分子が90度ツイスト配向しているネマチックエラストマー(TNE)をキラルインプリント法により作製することに成功した.キラルインプリント法は,架橋反応時に非反応性キラル剤を適量混合することによって,らせん配向の向きと回転角を制御し,反応終了後にキラル剤を除去する方法である.作製したTNEのリボン状試料の幅/長さ比を変化させ,マクロな形態の温度依存性を調べた.試料はマクロならせん形態をもち,らせんピッチおよびらせん半径は温度によって鋭敏に変化し,ある温度でらせんの向きが反転する挙動が観察された.一方,液晶分子がランダム配向である等方相の温度領域では,形態は温度に対して不変であり,観察された著しい形態変化は液晶配向の変化に起因することが明らかになった.また,TNEのらせん形態は幅/長さ比にも依存し,同比が小さいときはリボンの中心線は直線状のヘリコイド形態,同比が大きい時はリボンの中心線からせん状になったスパイラルリボン形態を示した.また,ヘリコイド形態を形成するには,TNE膜の中心層のダイレクター方向がリボンの長軸および短軸のいずれかに平行であることが必要であることも明らかにした.観察されたTNEの幅/長さ比依存性および温度依存性の特徴を液晶エラストマーの弾性体モデルを用いて理論的に説明することにも成功した.また,膜の表裏面間で液晶分子が垂直配向からプラナー配向に連続的に変化しているハイブリッド配向をもつNE(HNE)を作製することにも成功した.HNEが温度変化に対して屈曲方向の反転を伴う巨大な屈曲変形を示すことを明らかにした.また.観察された曲率の温度依存性を理論的に説明することにも成功した.
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