研究課題
基盤研究(B)
本研究は、電子励起状態での核磁気共鳴観測を行う光検出磁気共鳴装置の開発と、パイ共役系高分子薄膜デバイス素子のダイナミクスへの応用に関するものである。まず、高分子薄膜試料に対してマイクロ波を印加可能かつ、静磁場印加および温度可変な発光測定治具を作製した。この測定治具を用いることにより、ポリ(9,9-ヂオクチルフルオレン)[PFO]やポリ(3-アルキルチオフェン)[P3AT]のスピンコート薄膜に対して0-3.7mTの磁場条件下で、発光分光測定することが可能となった。発光現象を用いた光検出磁気共鳴法では、磁気共鳴信号は、振動磁場を印加することにより、極めて微弱な発光強度変化として測定される。したがって、発光測定に用いるレーザー光の安定性が重要となる。そこで、レーザーパワーコントローラを用いてレーザー強度の安定化を試みた。また、大気中での酸素ドープにより電子状態の変化を抑えるためにターボ分子ポンプ真空排気システムによる高真空下での磁気共鳴実験を試みた。しかし、作製した測定治具を用いた光検出磁気共鳴装置では、高分子薄膜デバイスに対してその検出感度は低く十分とは言えなかった。そこで、マイクロ波の試料への印加を確実にし、かつ、感度向上を目指すべく、数0.3Tesla程度の磁場条件下で磁気共鳴実験が可能な空洞共振器を作製し、光検出磁気共鳴装置の部分装置である電子スピン共鳴装置の作製と並行して、光検出磁気共鳴分光装置の作製を行った。さらに、ポリアルキルチオフェンやポリフルオレンを用いたクロスバージャンクション型の確率的閾値素子の作製を行い、光検出磁気共鳴法の適用を試みた。磁気共鳴測定用のデバイス素子の作製について以下で述べる。P3ATは、アルキル側基の長さをチューニングすることにより、室温付近で大きな構造ゆらぎをもつと予想される。そのような構造的にゆらいだ状態での電気伝導特性や誘電特性の時間変動、すなわちノイズ特性を測定した。その結果、構造ゆらぎに起因すると考えられる電気伝導度のゆらぎや、インピーダンスの変化が観測された。以上の知見は、π共役系高分子の動的性質を積極的に利用するニューロン型確率的閾値素子を創製するための基礎となると考えられ、生体型信号情報処理デバイスの実現のための重要な要素技術となることがわかった。
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