研究課題/領域番号 |
21350126
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
浦川 理 大阪大学, 理学研究科, 講師 (70273539)
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研究分担者 |
井上 正志 大阪大学, 理学研究科, 教授 (80201937)
四方 俊幸 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (10178858)
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キーワード | 水素結合 / RHEO-ATR-FTIR / ポリビニルアルコール / ポリ酢酸ビニル / レオロジー / shear thinning / ストレスオーバーシュート |
研究概要 |
本研究の目的は、1.赤外分光測定により化学種(化学結合の種類)を特定した上で、せん断流動下における分子の配向状態や水素結合状態を調べることができる測定装置「RHEO-ATR-FTIR装置」を構築することと、2.分子間で水素結合する高分子系の流動場下での水素結合状態と配向度および緩和のダイナミクスを、その装置を用いて明らかにすることにある。 RHEO-ATR-FTIR装置は、既存のFTIRに温度変化ができるATR測定ステージとコーンプレート型レオメーターを組み合わせて構築した。若干コーン-プレート間のギャップ調整部に改善の余地が残っているが、定常ずり流動下での赤外スペクトルの測定は可能である。 分子間水素結合によりレオロジー特性が系統的に変化するモデル系として、ポリ酢酸ビニルとポリビニルアルコールの共重合体P(VAc-VOH)(PVAcのけん化反応により合成)を用いた。この試料は、ビニルアルコールVOHの含率foHを増加させると分子間水素結合の割合が増え、foH=60%では水素結合による分子間会合が系全体に広がったネットワーク構造が形成されることがわかった。このfoH=60%の試料について、定常ずり流動下で発生する応力の時間依存性を測定したところ、ストレスオーバーシュートが起こり、その後、長時間側での定常値が、ずり速度の増加により減少するshear thinning挙動がみられた。このことから、流動場により水素結合が解離し.ネットワーク構造の破壊が起こっていることが示された。 P(VAc-VOH)の溶融状態におけるFTIR測定から、形成される水素結合にはVOHの水酸基とVAcのカルボニル基間および水酸基同士間の2種類が存在し、特に後者が優勢にレオロジー特性を支配していることがわかった。RHEO-ATR-FTIR装置により、一定温度で流動場を与え、水素結合の形態がどのように変化するかを調べた結果、流動場印加による水素結合形態の顕著な変化は見られなかった。このことより、shear thinning挙動が非常にわずかな架橋点の崩壊により起こっていると結論付けた。
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