研究概要 |
剛直高分子は高性能・高機能性材料として期待されるが、その剛直構造ゆえに小溶不融となり、成型加工が困難である。そこで本研究では、貧溶媒中でのオリゴマー相分離を利用することにより、高性能芳香族高分子ナノファイバーネットワーク構造体のビルトアップ型調製法の開発を目指して、以下の3点を検討した。 1. ポリ(p-オキシベンゾイル)(POB)ナノファイバーネットワーク調製条件の探索 p-アセトキシ安息香酸と3,5-ジアセトキシ安息香酸をジベンジルトルエン混合物中高温下で脱酢酸重合することにより、直径約1μmの針状結晶が球状微粒子を介して三次元的に繋がったPOBのネットワーク構造体を調製することができた。さらに、その生成機構を検討し、2液相分離により濃厚相液滴が生成した後にオリゴマーの結晶化によって針状結晶が微粒子を貫くように発達し、その後、微粒子部が再溶解することによってネットワーク構造が完成することを明らかにした。 2. POBネットワークの網目間距離とファイバー径の制御 見出した調製法を高性能高分子不織布の調製法として確立するために、オリゴマー析出時の過飽和度を可変パラメーターとして網目結合点間距離の制御を試みた。その結果、不織布の平均網目結合点間距離を2μm~6μmの範囲で制御することに成功した。さらに、ナノファイバー化についても検討したところ、320℃で重合することにより直径100nmのナノファイバーから成る不織布を得ることができた。 3. ポリ(2,5-ベンズイミダゾール)(PBI)ナノファイバーネットワーク構造の生成条件の探索 フェニル3,4-ジアミノベンゾエートを用い、ジベンジルトルエン混合物中、窒素雰囲気下350℃で20時間重合を行った。その結果、重合濃度0.5-3.0%において、収率36-94%で直径約40-50nm程度のナノファイバーが三次元的につながった繊維状集合体が調製できた。得られたナノファイバーは高結晶性であり、分子量の高いものであった。窒素雰囲気中での10%重量減少温度は634-644℃であり、優れた耐熱性を示すことが分かった。
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