本研究においては、有機分子結晶をフローティングドットに用いたナノワイヤメモリを実現することを目的としている。フローティングドットには、高い電子受容性を持つC60分子性結晶を用いる。 今年度は、C60分子を含むポリマーのスタックゲート構造を用いたフラッシュメモリを作製した。具体的には、n型Si基板上のSiO2(膜厚10nm)上に有機基修飾C60分子を含むポリビニルフェノールが400nm程度堆積され、更にトンネル絶縁膜としてポリスチレンが200nm程度堆積され、その上にAlゲートが形成された構造である。有機基修飾C60分子は、ピロリジノフラーレンである。この構造について、ダイオードの容量-ゲート電圧(C-V)特性を詳細に測定した。ポリビニルフェノールにC60分子を含まない場合はC-V特性にヒステリシスが現れない事から、このゲートスタック構造においてC60分子がキャリアトラップになっている事が判った。スタック構造においてSiO2膜がある場合は電流-電圧特性において電流がほとんど流れないのに対してSiO2膜がない場合は大きな電流が流れる事から、キャリアはAl電極からC60分子に注入されている事が判った。保持特性の測定の結果、保持時間は6時間以上であった。書き込み特性を詳細に調べた結果、書き込み直後から10分間程度の時間ではポリビニルフェノール中のC60分子間で注入電荷の再分布が生じている事が示唆された。
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