研究概要 |
本年度は、最もすぐれたn型半導体として有機太陽電池に必ず用いられているフラーレン(C60)のpn制御を完成することを目標に研究した。 セブンナイン(7N,99.99999%)まで超高純度化したC60と、モリブデン酸化物(MoO_3)とを同時に蒸着する共蒸着法によって、MoO_3をドーピングした。極微量の50ppmまでドープする技術を開発した。 ドープしていないC60ではフェルミレベルは45eVでn型性を示すのに対して、MoO_3を3300ppmドープしたものは5.88eVになり、p型になったことを世界で初めて示した。さらに、C60をn型からp型化することによって、実際にp型の光起電力特性が出現することを確認した。 本方法によって、1種類の有機半導体のみを用いてn型、p型の両方を得ることができ、太陽電池の電圧の起源となる内蔵電界を得られる。このことは、有機太陽電池もシリコン(無機系)太陽電池のように、ドーピングによってエネルギー構造を設計したセルを、制御可能な方法で製造することができることに基礎科学的な根拠を与えるものである。 今後さらに、ドーパントの種類や濃度の最適化や、他の有機半導体への適用などの展開が考えられる。また、従来型のC60(n型)とフタロシアニン系(p型)の電池との併用により、実用的な性能の有機太陽電池を自由に設計して開発することが期待できる。 本成果は、2011年3月3日付日経産業新聞、3月15日付日刊工業新聞に掲載された。
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