研究概要 |
本年度までに、有機半導体においても、無機半導体と同様の、ドーピングによるエネルギー設計が自由自在にできることを示した。n型化ドーパントとしてCs2CO3、p型化ドーパントとしてMoO3およびV2O5を用いた。C60とフタロシアニン(H2Pc)については、ドーピングのみによる、pnホモ接合、n+p+有機間オーミック接合(+は高濃度(ハイ)ドープを意味)、それらの組み合わせによるタンデムセルの作製に成功した。また、金属電極と有機半導体の界面に、ハイドープ層を挿入することで、金属/有機接合をオーミック化する技術を確立した。H2Pcの成果については、2012/9/14付け中日新聞「「塗る太陽電池」夢近づく」、2012/9/21付け科学新聞「有機半導体でp型、n型を自在制御」に掲載された。 有機薄膜太陽電池においては、2つの有機半導体の共蒸着膜を用いることが光電流発生に不可欠である。そのため、共蒸着膜を1つの有機半導体とみなしてドーピングすれば、共蒸着膜は全バルクで励起子が分離するので、「励起子が分離しない」という、有機特有の問題はなくなる。本年度、6T(チオフェン誘導体):C60およびH2Pc:C60共蒸着膜においてpn制御技術を確立し、ショットキー接合、pnホモ接合、p+, n+電極金属オーミック接合、n+p+ホモ接合(有機間オーミック接合)、タンデムセルなど、一連の基本接合をドーピングのみで、共蒸着膜中に作り込むことに成功した。また、ケルビン法によるセルエネルギー構造の直接マッピングに成功した。なお、p+in+光起電力接合とn+p+オーミック接合を組み合わせた、ドーピングのみによるタンデムセルは、開放端電圧は2倍の1.7 Vとなり、これまでにない世界初のタイプのセルであるが、かなり高い効率2.4%が得られた。
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