本研究は、ウエット処理、真空アニール、ホモエピタキシにおけるSi(110)表面のステップ挙動を明らかにすることを通して、Si(110)表面ステップバンチング制御法を確立し、ステップ制御されたSi(110)表面をテンプレートとして半導体電子構造を有する配向グラフェンナノリボンを自己組織的に形成する技術を開発することを目的とするものである。本年度は第一段階として、原子レベルで制御されたグラフェンナノリボン作製用Si(110)基板テンプレートの作製を目的として研究を行った。具体的には ●Si(110)基板上Si原子ステップのステップバンチングの成長条件の最適化 ●Si(110)基板上SiC薄膜作製条件(成膜温度・成膜圧力)の最適化 ●成膜条件が最適化されたSiC薄膜/Si基板表面上のエピタキシャルグラフェンの成膜条件の最適化の三つの研究項目の実施を行った。これらの実施された研究項目において、鍵となる点は、成膜されたステップバンチングされたSi基板表面、SiC薄膜表面、及びエピタキシャルグラフェン表面の原子レベルでの構造である。これらの表面構造評価に、平成21年度に購入した原子間力顕微鏡(AFM)を主に使用した。このAFMによる表面構造観察結果により、上記三点の研究対象となった表面構造が成長条件や成膜条件により敏感に変化することを明らかにし、最適な条件を見出すことに成功した。本年度の実験結果は、平成22年度に行う、グラフェンナノリボンの自己組織的形成法の確立に、役立つものである。
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