研究概要 |
1.GaN上にCoナノ構造およびCo/Fe多層ナノ構造を形成し,走査型トンネル顕微鏡(STM)で評価した.Coナノ構造のサイズは成長膜厚に依存すること,Coは成長初期にはfcc構造をとり8nmあたりからhcp構造をとること,Co原子あたりの磁気モーメントはサイズに依存して変化し,直径7nmで3μ_Bを示しサイズが大きくなるにつれてCoのバルク値に近づくこと,が明らかとなった.Co/Fe多層ナノ構造はbcc構造をとること,その保磁力や飽和磁化は1層あたりの膜厚に依存すること,を明らかにした.この結果は層構造を変えることで磁気特性を制御できることを示している. 2.Fe(110)/GaN(0001)界面で得られるスピン偏極率は,そのバンド構造から0.3程度と見積もられる.より高効率なスピン注入に向けてFe_<1-x>Co_x合金を用いた場合についてバンド計算を行い検討した.その結果,フェルミ準位での状態密度から見積もると,x=0.78(bcc構造をとる最大のx)で-0.8程度と大幅に改善されることを見出した. 3.GaNへのスピン注入効率向上と磁化特性制御に向けて,GaN上へ酸化鉄および窒化鉄を形成した.酸化鉄は島状成長するのに対して,窒化鉄は表面平坦性に優れた薄膜として成長することが分かった. 4.GaNテンプレート上に条件を変えて成長したGaGdN薄膜について磁化の温度依存性(M-T曲線)を評価し,その磁性の発現機構について検討した.Ga/N比が1を越えた条件下で成長したGaGdN薄膜では,零磁場冷却後M-T曲線と磁場中冷却後M-T曲線が室温付近で分離した.一方,Ga/N比が1を下回る条件下で成長したGaGdN薄膜では,両者は30K付近で分離しており,微細な磁性粒子が析出していることを示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GaNテンプレートはサファイヤ上に成膜されているため,弾道電子電流を測定するにはGaNテンプレートに加工を施す必要がある.その加工装置が不良となり,修理と再稼働に時間を要したため,弾道電子電流測定実験については,当初予定より少し遅れがある.それ以外については,概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,GaNテンプレートの加工装置に支障を来していたが,漸く順調に稼働し始めたので,今後,その遅れを取り戻すように重点的に研究を推進する.また,4端子構造による非局所測定での実験についても検討する.
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