「フェロエレクトリック半導体」は強誘電体としての大きな非線形性と半導体としての桁違いに速い時間応答をかねそなえ、これまで位相共役鏡の未踏波長領域であった近中赤外(1~1.6μm)帯で大きなフォトリフラクティブ活性を示す新しい材料である。本研究の目的は、「フェロエレクトリック半導体」の一つSn_2P_2S_6(SPS)結晶の性能(高反射率、超広帯域、超高速応答、高光損傷閾値)を極限まで引き出し、近中赤外(1~1.6μm)の超短パルス光に対する革新的な位相共役鏡を構築することにある。今年度は以下の項目について研究を進めた。 ○1.5μm超短パルスレーザーに対する「フェロエレクトリック半導体」SPS結晶の二光波混合特性 SPS結晶の1.5μm超短パルスレーザーによる二光波混合利得を測定した。特に、TeドープのSPS結晶は1.55μm帯で1光子吸収と二光子吸収を示すため、CWレーザーとフェムト秒レーザーを使い分けて二光波混合利得の測定を行った。CWレーザーによる1光子吸収励起では、二光波混合利得は最大でも~1cm^<-1>であった。これに対して、フェムト秒レーザーを励起光源に用いた場合、二光波混合利得は1.68cm^<-1>まで向上する。また、キャリア易動度が大きく再結合レートの大きなSPS結晶は、通常1W/cm^2以下の微弱な光ではフォトリフラクティブ効果は起こらない。フェムト秒レーザーを励起光源に用いた場合には、1W/cm^2の平均光強度で>0.3cm^<-1>の二光波混合利得が観測された。以上のことからフェムト秒レーザーを用いることでキャリアの二光子吸収励起が支配的になり二光波混合利得を大幅に改善できることが分かった。
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