研究概要 |
現在、3次元フォトニックバンドギャップ(3D-PBG)を有する「フォトニック結晶」による光閉じ込め効果を利用した光制御素子を開発する研究が盛んに行われている。最近我々は、従来の常識に反し、周期性を全くもたない誘電体ランダムネットワーク構造において、明確な3D-PBGが形成し、強い3次元光閉じ込め効果が発現することをFDTD法による数値シミュレーションによって見出した(Phys.Rev.Lett,100,013901,(2008))。この構造は局所的に4配位のランダムネットワーク構造で、我々はこれをフォトニック・アモルファス・ダイヤモンド(PAD)と名付けた。本研究では、そのようなランダムネットワーク構造を用いた全く新しいタイプの光制御素子の開発をめざしている。 昨年度はまず、FDTD法によりPAD中の光固有モードを詳細に調べた。3D-PBG直上と直下の固有モードがそれぞれ空気領域、誘電体領域に局在する明確な傾向があることがわかった。これは従来のフォトニック結晶と同様に空気バンドー誘電体バンドの描像がPADについても成り立つことを示している。このような3D-PBG形成機構が非周期系でも働くことが初めて明らかになった。またPADにおいて高周波数領域に新たな3D-PBGの形成を見出した。この3D-PBGは、最初発見されたものとは異なる機構で形成していると思われる。 続いて一昨年度作製したマイクロ波領域サイズのPADにおける電磁波透過実験を継続して行い、以下の成果を得た。i)3D-PBG形成の実験的検証に成功した。ii)その3D-PBGが等方的であることを示した。これはフォトニック結晶では原理的に実現できない特徴である。将来的に欠陥を組み込んで光制御を行う際に素子の配置の自由度が高まり、有利となる可能性がある。iii)パスバンドの光が拡散伝播することが示され、その平均自由行程がバンド端で極めて短くなり光局在が実現することがわかった。今までに光局在が実験的に観測された例は限られており、この結果は光局在研究に新たな道を開くものである。
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