研究概要 |
本研究プロジェクトの3年度目(最終年度)であった2011年度は,単一マイクロリングマッハ・ツェンダー光変調器の特性改善,および両アームにマイクロリングを有する光変調器の試作を行った. 前者については,MZ干渉計のアーム長の改善を行って動作点電圧の移動することにより,昨年度の単一マイクロリングマッハ・ツェンダー光変調器と比較して,動作電圧の20%の低減に成功した.また,入力分岐部の光パワー分岐を非対称化し,その分岐比を最適化することにより,消光比を昨年度の同素子に比べ約10dB改善し,DC動作において約27dBの大きな消光比を得ることに成功した.さらに,高周波変調特性の測定を行い,約4GHzまでの動作が可能であることを確認した.この動作速度は,電気回路の容量・抵抗積で決まる時定数で律速されており,更なる高速化が可能である.さらに,コア層残留キャリアによって生じる電界不均一性による量子井戸の電界誘起屈折率変化特性の劣化を抑制するため,多重五層非対称結合量子井戸の構造最適化について検討,試作を行った.その結果,電界誘起屈折率変化量はそれほど改善しなかったものの,残留不純物濃度の悪化によるトレランスの向上を図ることができた. 後者については,理論的特性検討を進めるとともに,分子線エピタキシー法により結晶成長したウエハを用いてデバイス試作を行い,その変調特性を評価した.その結果,電界印加時のリング共振器における吸収増加により動作条件が悪化し,理論的に期待された特性は得られなかったが,消光比5dBの動作およびプッシュプル動作が可能であることを示した.
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