遺伝情報の転写をつかさどるタンパク質がDNAの特定の塩基配列を認識し、その部位と結合することで転写の制御は行われている。本年度は、結合によるDNA立体構造の変化を、リアルタイムで計測するシステムの開発を行った。具体的には、転写因子Sox2が結合する塩基配列を有するDNAの両端に各々金ナノ粒子を固定し、DNA立体構造変化による金ナノ粒子対の距離に依存した局在プラズモン共鳴の波長変化を計測する顕微光学系を設計・開発した。さらに、有限差分時間領域法(FDTD)により金ナノ粒子の直径、DNAの塩基長をパラメータとした波長シフトの解析を行い、リアルタイム測定を実現するためダイクロイックミラーにより波長シフトが可能な系を設計した。 また、プラチナ原子5個から構成される蛍光性金属ナノクラスターの合成に成功した。具体的には、六塩化白金酸(H_2PtCl_6)をPAMAM(G4-OH)存在下で、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH_4)により還元し、合成した。その後、PAMAMをメルカプト酢酸により置換し、高速液体クロマトグラフィーにより分収し、精製を行った。精製物をESI質量分析器およびICP質量分析器により分析した結果、プラチナ原子5個から構成されるナノクラスターが形成されることを確認した。合成したプラチナナノクラスターの吸収波長および発光波長のピークは各々380nm、450nm、蛍光寿命は8.8ナノ秒、また絶対量子収率は18%であった。さらに、プラチナナノクラスターによりHeLa細胞に免疫染色を施し、ガン細胞に発現するケモカインレセプターをバイオイメージングすることにも成功した。細胞毒性についても実験的に検証したところ、ラベリング48時間経過後も90%以上の細胞が生きていることを確認した。
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