研究課題/領域番号 |
21360035
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
井須 俊郎 徳島大学, 大学院・ソシオテクノサイエンス研究部, 特任教授 (00379546)
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研究分担者 |
北田 貴弘 徳島大学, 大学院・ソシオテクノサイエンス研究部, 特任准教授 (90283738)
森田 健 徳島大学, 大学院・ソシオテクノサイエンス研究部, 特任講師 (30448344)
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キーワード | 量子ドット / 微小共振器 / MBE,エピタキシャル / 光スイッチ / 非線形光学応答 |
研究概要 |
本研究は半導体多層膜による微小光共振器構造を用いて光パルスの電場強度や時間形状を制御し、超高速かつ大きな非線形光学応答を得ることによって、超高速動作できる面型全光スイッチングデバイスを実現することを目標とするものである。平成23年度は、前年度に作製した歪緩和InGaAsバリア層に埋め込んだInAs量子ドットにErドーピングをおこなうことで3ピコ秒という超高速緩和を実現できることが確認できたため、このErドープInAs量子ドットを含む共振器層からなる多層膜微小共振器構造の作製とその非線形光学応答信号について測定評価をおこなった。非線形光学応答の大きさの改善のために歪緩和埋め込み層のIn組成を大きくすると、多層膜微小共振器構造の共振器特性が劣化する問題点が生じたため、共振器構造の多層膜の結晶成長の成長温度を上げるなどの作製条件の改善をおこなった。その結果、十分な共振器特性を持ち、超高速緩和の量子ドットを有する多層膜微小共振器構造が作製でき、半値幅4ピコ秒の超高速応答を示す光カースイッチの動作を検証することができた。しかしながら、量子ドット自身の応答特性と較べて、遅い緩和時間を持つ量子ドットによると思われる応答信号の成分が増加しており、応答信号の裾が長く残り、パターン効果の抑制において好ましく無い結果が生じた。これは、量子ドットのキャリア緩和特性が多層膜共振器構造の成長条件に影響を受けていると思われ、この改善のため、多層膜微小共振器構造そのものの見直しを行なった。これまで共振器層全体を歪緩和InGaAs層としてきたが、InAs量子ドットの周囲だけの極薄い部分のみをInGaAs層とするAsAs層を主とする共振器構造に改良し、その作製と特性評価を行なった。これらの結果、わずか1層のErドープInAs量子ドット層を有する構造で、低速緩和成分がほぼ皆無な可飽和吸収の超高速応答特性を、これまでの構造とほぼ同等の強度で得ることができた。この結果は、ひずみ緩和バリア層に埋め込んだErドープ量子ドットを用いた微小共振器構造が低パワーでピコ秒オーダーでの超高速動作と、さらにパターン効果の抑制ができ、面型全光スイッチングデバイスとして期待できることを示したものと考えられる。
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