微小電流の整数倍器のプロトタイプとして、A1製の微小電流4倍および8倍器を作製した。当初の計画通り、非常に単純化した接合列構造を持ち、接合列間の静電結合容量が10aF程度の超弱結合の素子を作製し、その特性を調べた。その結果、この構造では、増倍率は平均的には意図通りになるが、増倍精度が著しく悪いことが明らかになった。従来の結合容量100aF程度の弱結合の電流ミラー素子では、最高99.7%までの電流転写精度を得ていたが、今回作製した電流整数倍器では、電流増倍率の揺らぎは、最大100%近くにまでなってしまった。これは、接合列間の結合容量が小さいことによるものと考えられ、結合容量の大きさが電流の転写あるいは増倍精度に大きく関わることが示唆された。そこで、当初の計画を変更し、従来よりも結合の強い量子電流ミラー素子および微小電流整数倍器を作製するための新たなプロセス装置および技術の導入を図った。これにより結合容量が接合容量と同程度の1fF前後になる強結合素子の作製が可能になった。次年度、この強結合のミラー素子をよび整数倍器について、特性評価を行う。 微小電流の計量学的な比較システムについては、用いる冷凍機自体にトラブルが発生したため、導入計画が遅れている。作製する極低温電流比較器(CCC)を設計し、新規導入したDC SQUIDシステムを含めた全計測システムの動作設計を行った。CCCを除く機器については、冷凍機への導入を進めている。次年度初めにCCCを作製し、システムを完成する。 また、次年度導入を検討している高転移温度をもつ超伝導体材料として、Vの電子ビーム蒸着による微細素子作製を試みた。
|