昨年度導入した接合列間に大きな結合静電容量を作製するプロセスを用いて、結合容量が接合容量に近い(数100fF)強結合型の量子電流ミラー素子を作製した。電流転写特性では、転写先接合列0バイアスで電流が誘起されることが明らかになり、これは強結合型の特徴と言える。また、0バイアスでの誘起電流が磁場の印加とともに極性反転し、電極が超伝導状態では、常伝導状態とは異なる電流誘起機構があることが示唆された。これは、量子電流ミラー効果の発生機構に繋がる興味深い発見と考えられる。また、強結合型の素子は超弱結合型の素子に比べ、電流転写のフィデリティが高いことを実験的に示した。 昨年に引き続き微小電流整数倍器のプロトタイプとして、Al製の微小電流10倍器を超弱結合型の電極構造で作製し、その動作確認をし、原理的に電流10倍化が可能であることを示した。また、これを強結合化し電流増倍特性を改善するために、作製プロセスが比較的簡易になるような素子設計を行い、素子を試作した。 電流転写領域を拡大するために、昨年度検討したAl/Vの異種超伝導体電極をもつ量子電流ミラー素子の作製条件、とくにV細線蒸着膜が高い超伝導転移温度をもつ蒸着条件を探索した。そして、Al/V接合をもつ量子電流ミラー素子を試作した。この電極組合せは、特性上および素子作製上有用であるため、その作製プロセスを効率化するための新しい成膜装置の導入をはかりつつある。 微小電流の計量学的な比較システム用の3000:3000の巻数をもつ極低温電流比較器を、産業技術総合研究所の協力を得て作製し、システムに導入した。
|