微小電流整数倍器のプロトタイプとして作製したAl製の超弱結合型微小電流整数倍器について、整数倍限界値を測定した。その結果、このタイプの素子では、14倍程度が電流整数倍限界であることが明かになった。この結果と微小電流10倍器についての整数倍動作の結果を国際会議にて発表した。 超弱結合型の動作を改善するために昨年に引き続き強結合型の電流ミラー素子について接合列間の結合度を変えた素子を複数作製し(結合容量が1~3fF)、その特性から電流転写精度と接合列間の結合度との定量的な関係を明らかにした。結合度が高いほど、電流転写精度が高くなること、また高精度転写のバイアスマージンが広くなるという結果を得、微小電流整数倍器の改善のための強結合化の根拠が得られた。 昨年度発見した強結合ミラー素子での0バイアスでの誘起電流とその磁場の印加による極性反転についてさらに研究を進めた。磁揚を印加せずとも高バイアス電圧で準粒子トンネリングを引き起こすと誘引電流が急激こ反転すること、また、結合が十分強い場合には、ごく低いバイアス電圧では、あらかじめ極性力が反転している領域があることなどが見つかった。電流転写現象の背景となる電荷のドンネリング伝導が想定外に複雑な過程を含むことが明らかになった。この0バイアスでの現象については、国際会議・国内学会にて発表した。 電流転写領域を拡大するために昨年度導入したAl/Vの異種超伝導体電極をもつ量子電流ミラー素子を作製し、その特性を調べた。Al/Al系に比べ接合のもつトンネル抵抗がでも転写電流の最大値が大きくなることが分かった。ただ、Al/Al闘系に比べ格段に大きな転写電流を得るまでには至っていない。
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