研究概要 |
まず、トムソン散乱計測が可能でPDPの放電維持電極を模擬する電極基板(幅2mm、厚さ3mm長さ50mmのガラスの上にギャップ間隔0.1mmの対向型電極を形成し誘電体とMgO膜で被覆したもの)に、厚み0.2mm,幅2mm,長さ20mmのカバーガラスを貼り付けて、ギャップ両側に0.15mmだけ電極部がむき出しになった狭奥行き電極基板を製作した。また、比較用に奥行き長さ0.5mmの電極基板も製作した。 これらの電極を用いて、Xe原子とNe原子の可視および近赤外域での発光線について、時間的・空間的進展の様子をICCDカメラにより観測した。その結果、比較的高い印加電圧と高Xe分圧(10%以上)の条件では、発光強度の時間的立ち上がりが数10nsと速く、また放電の空間的広がりも時間的に進展するより電極全面に短時間で広がって形成されるという、PDPテストパネルにおいて観測されていると同様の現象が確認された。さらに、Xeの分子線である174nm付近の真空紫外線発光の分光的測定を行った。新たに製作した真空容器とフッ化カルシウム製のレンズで真空紫外線用分光器まで174nm光を伝送し、光電子増倍管により、放電全体からの分子線発光を観測した。その結果、Xe分圧10%以上の場合について、長さ0.15mm電極基板の方が長さ0.5mm電極基板より真空紫外線発光効率が2倍程度高いことが確認できた。 分光的観測から、狭奥行き放電による発光効率改善が、本研究の模擬電極でも観測されたので、放電構造をトムソン散乱計測で調べる実験を行った。その結果、比較的高い電圧と高Xe分圧(10%以上)の放電の場合は、電極エッジ部の狭い領域で電子密度が極めて高くなることが観測された。この結果は、電極の狭い領域に紫外線発生が集中するため、余分な領域のない狭奥行き放電での効率がよくなったことを示唆する。
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