昨年度までに、トムソン散乱計測が可能でPDPの放電維持電極を模擬する電極基板に加工を加えて、間隔0.1mmのギャップ両側に0.15mmだけ電極部がむき出しになった狭奥行き電極板を製作した。また、奥行き長さ0.5mmの電極基板も製作して比較の対象とした。これらの電極を用いた実験により、高Xe分圧での放電で、実際に狭奥行き放電の発光効率が高くなる傾向にあることを確認し、可視・近赤外・真空紫外分光計測とトムソン散乱計測を実行して放電構造について検討した。模擬電極基板での放電プラズマにおいて、トムソン散乱で得られた電子密度は、10^<20>m^<-3>を超えるものであった。その場合、Xeイオンの再結合過程が紫外線発光に20%にも及ぶ寄与をする可能性がある。そのため、実際のPDP放電にも適用できるシュタルク効果を用いた電子密度測定の可能性について検討した。模擬電極放電において、Ne/Kr混合ガスに水素を1%以下の微量添加することで、バルマーβ線の広がりから電子密度を評価した結果、この方法でも10^<20>m^<-3>を超える電子密度力弐得られた。次年度に、実際のPDPミニパネルの放電にシュタルク法を適用し、10^<20>m^<-3>以上の電子密度が得られるかどうかを確認する予定である。 究極的な発光効率が期待できる、短パルスの誘電体バリア放電(DBD)または容量連結放電(CCD)についても、トムソン散乱計測により、その構造を調べた。CCDについては、放電開始後30ns以降の電子密度、電子温度の時間変化が、3体再結合過程で説明できることを示した。DBDについても、CCDの回路と電極を改良することで、安定した放電プラズマの生成が可能となった。DBDでは、電流として流れる総電荷量がCCDの1/5となったが、予備的な測定を行った結果、電子密度のピーク値も1/5となることがわかった。
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