昨年度、PDP模擬電極放電において、Ne/Kr混合ガスに水素を1%以下の微量添加することで、水素バルマーβ線の広がりからシュタルク計測法により電子密度を評価できることを示し、トムソン散乱計測結果と矛盾しない10^<20>m^<-3>を超える電子密度が得られた。そこで、本年度は、まず実際のPDPミニパネルの放電にシュタルク計測法を適用することを試みた。水素を0.1%から3%程度まで混合したミニパネルを4枚製作してバルマーβ線を検出しようとしたが、残念ながらいずれのパネルでも検出できなかった。MgO保護膜に水素が吸着されて、放電ガス内の水素濃度が0.1%より大幅に減少したことが原因と考えられる。 本研究で目的とする、高発光効率発現機構の放電構造との関係を明らかとするには、PDP模擬電極を用いた放電より、対向電極間の容量連結放電(CCD)を用いた方が、トムソン散乱計測により詳しく電子密度、電子温度の分布とその時間発展を知ることができ、有利である。CCDのトムソン散乱計測は、昨年度までにNeガス中放電について行ってきた。そこで、本年度は、NeガスにXeガスを10~20%混合してCCD放電からのXe分子線の2次元的発光分布を直接観測できるシステムを製作した。PDP模擬電極を針対半球対向電極(ギャップ05mm)に置き換え、放電容器の窓材をXe分子線(174nm)の透過するフッ化カルシウムとした。放電容器外側に真空容器を接続して、対向側に真空紫外光に感度を持つICCDカメラを設置し、フッ化カルシウムレンズにより、CCD放電からのXe分子線のイメージをICCDカメラの感度面に結像できるようにした。CCDの放電電荷制約用コンデンサーの容量を、50pFから300pFの範囲で取り換え、放電のパルス幅をこれで変化させた。その結果、Xe分子線の発光量は、容量を増やすほど減少する傾向を示し、単位電荷量(あるいは単位エネルギー)当りにすると、50pFの場合が300pFの場合の10倍以上に発光量が大きいことがわかった。すなわち、短パルスとする程、Xe分子線の発光効率が増大することを、CCDで確認することができた。
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