本研究では、GPU(Graphics Processing Unit)を用いた大規模高速計算のための粒子法の研究(MPS(Moving Particle Simulation)法)を行った。具体的には、以下の2項目の研究を実施した。 (1) 陽解法を用いた非圧縮性流れの計算精度および高速化に関する研究 平成21~23年度の研究により、非圧縮性流れの計算では、マッハ数を仮想的に調節した疑似圧縮性流体に対する陽解法が高速であり、計算精度はあまり低下せず、大規模問題に対する並列計算に適していることが示された。そこで平成24年度は、この陽解法に対して剛体-流体連成解析アルゴリズムを開発し、連成解析が適切に行われていることを検証した。本アルゴリズムを用いて漂流物(港に係留されている船舶)を伴う津波の遡上解析を行い、その有用性を示した。また、実地形3次元津波遡上解析を行うため、津波波源から沿岸までを2次元浅水方程式によって計算するコードの出力結果を波の入力の境界条件として設定できるようにした。これにより、東日本大震災における石巻市への津波遡上解析を行った。 さらに、陽解法を2段階で領域分割するアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムを用いれば、GPUクラスターによる大規模計算が可能になる。 (2) 陽解法を用いた弾性解析の計算精度および高速化に関する研究 大変形に適用可能な弾性解析を陽解法で行うアルゴリズムを平成21~23年度の研究により開発し、平成24年度はこれを生体に適用した。肺の呼吸による変形に関して、患者の医用画像と比較することで精度の検証をおこなった。また、肋骨を剛体と弾性体の組み合わせとしてモデル化し、胸骨による呼吸運動のシミュレーションを行った。本シミュレーションについても医用画像を用いることで精度の検証を行った。
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