研究概要 |
高温高圧環境下で使用される配管溶接部などのクリープ損傷を計測する非破壊検査法のひとつであるボイド面積率法が用いられている.これに対し,本研究ではボイドの三次元的な幾何形状を反映させたボイド体積率を用いた余寿命評価法を開発するために、電子後方散乱回折法(EBSD)と電子顕微鏡(SEM)を組み合わせてボイドの三次元幾何形状を測定する技術を開発した. まず,幾何形状計測はシリアルセクショニング法と呼ばれる断面写真を繰り返し撮影し,三次元形状を再構築する手法を用いた.断面はコロイダルシリカにより研磨し,断面間距離を0.5μmとなるように試験片である1Cr-1Mo鋼の研磨条件を求めた.次にボイドの三次元形状はSEM像を二値化処理した画像を使用した.ただし,この画像にはボイド以外のコンタミネーションなども含まれることと,ボイドは結晶粒界上に存在していることから,EBSD像を用いて粒界を抽出し,コンタミネーションなどは除去した.また,ボイドの形成には結晶粒界が影響することから,EBSD像を用いて同時に結品粒の三次元幾何形状も計測した. 計測に用いた試験片は電力中央研究所より提供された1Cr-IMo鋼丸棒クリープ試験片である.試験条件は温度580℃,応力180MPa,破断時間4200時間である.また,破断時間の25%,50%,75%で試験を停止した中断材も併せて計測した. 計測した結果,ボイドは応力に三次元的に垂直である旧オーステナイト粒界に集中して発生していることが明らかになった.ボイドの形状については,初期のボイドは球形であるが,損傷が進行するにつれ長球状から扁球状に変化し,破断材のボイドはこれらが結合した状態が多く観察された.ボイドのサイズについては,初期ほど小さく(2μm以下),後期ほど大きい(2μm以上)が,後期であっても2μm以下のボイドは形成され続けていることも明らかになった.
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