研究概要 |
本研究では,接着により接合した被接合材料のリサイクルを実現すべく,必要な時に剥がせる解体性接着剤の開発を目的としている.具体的には,接着剤に発泡剤を混入し,加熱時に生じる膨張力を利用して接着接合部の解体を図る. このため,発泡剤の膨張特性や熱的安定性,接着剤樹脂の弾性率,強度および粘弾性特性,並びに発泡剤周辺に生じる応力場の強度などが重要となる.特に,発泡剤が膨張を開始する高温時における接着剤樹脂の変形や発生応力が重要となる.当該年度においては,発泡剤の熱的安定性を実験的に調べ,また接着剤樹脂の弾性率,強度および粘弾性特性を実験的に調べた. 具体的には,数種の熱膨張性マイクロカプセルと膨張黒鉛を取り上げ,その耐熱性と長期安定性を確認した.この結果,特定の発泡剤においては,実用上問題のない熱的安定性を有することがわかった. さらに,今回購入したTMA装置を用い,接着剤のマトリクスたるエポキシ樹脂の弾性率や粘弾性特性(クリープ特性)を調べた,この結果,これらの特性が温度に強く依存することを確認した.さらに,これらの得られたパラメータをもとに,発泡剤周辺に生じる応力場の有限要素シミュレーションを開始した.具体的には,発泡剤を接着界面に配置したモデルを考え,これを軸対称有限要素法により解析した.その結果,発泡剤中心部より少し離れた箇所で最大応力が生じ,かつその成分はせん断が支配的であること,またその応力値が接着界面を剥離するのに十分な大きさを有することなどを確認した.
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