研究概要 |
本研究では,接着により接合した被接合材料のリサイクルを実現すべく,必要な時に剥がせる解体性接着剤の開発を目的としている.具体的には,接着剤に発泡剤を混入し,加熱時に生じる膨張力を利用して接着接合部の解体を図る. このため,発泡剤の膨張特性や熱的安定性,接着剤樹脂の弾性率,強度および粘弾性特性,並びに発泡剤周辺に生じる応力場の強度などが重要となる.平成22年度は,発泡剤として熱膨張性マイクロカプセルを取り上げ,この膨張特性を実験的に調べたが,平成23年度は,マトリックス樹脂をシリコーン樹脂に変更し,その膨張特性と,界面応力への影響を実験的に調べた. さらに,発泡剤周辺に生じる応力場の有限要素シミュレーションを,シリコーン樹脂に対しても実施した.具体的には,発泡剤を接着界面に配置したモデルを考え,これを軸対称有限要素法により解析した.この結果,ゴム弾性特性を有するシリコーン樹脂でも,マイクロカプセルが大幅に膨張することは無く,ある一定の値で膨張が収束することを見出した.すなわち,シリコーン樹脂の非線形性が,マイクロカプセル近傍の大ひずみ場で発現するため,その拘束力が高まり,マイクロカプセルの膨張を阻害することが分かった. 以上の結果から,接着剤のマトリックス樹脂をシリコーンなど,高度な柔軟性を有するものに変えても,熱膨張性マイクロカプセルの膨張はあまり大きくならず,したがって剥離特性も向上しないことが分かった.また,剥離現象に影響を与える因子としては,樹脂の粘弾性特性よりも,ゴム領域での大変形時における非線形構成関係が支配的であることが分かった.
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