研究課題
前年度までの研究により膝関節に対する3次元骨-軟骨モデル再構築手法を確立した。本年度は股関節への応用と更なる展開を図った。人工股関節ではポリエチレン製ライナー(以下、ライナー)の摺動面に生じる応力分布の解析が、摩耗のメカニズムやインプラントのデザインを考える上で重要である。そこで、3次元動作分析装置Viconを用いて股関節の動作解析を行い、剛体-バネモデルを基礎とする離散要素解析により摺動面上の応力分布を求めた。THA術後患者5名を対象として動作解析を行った。骨盤、大腿部と下腿部に計26個の反射マーカを貼付した状態で、立位2方向CR撮影とViconにより運動測定(歩行、椅子立ち上がり、同座り込みの3動作を対象)した。また予めCTにより下肢骨の3次元骨モデル(以下、骨モデル)を構築した。CR画像に対するイメージ・マッチングにより得られる骨モデルー反射マーカ間の相対位置と運動測定で得られる反射マーカの軌跡とを一致させるような最適化計算を行い、骨モデルの位置を推定した。さらに主要な38本の筋を対象者の骨形状に合わせて付加した筋骨格モデルを作成し、逆動力学により、股関節に作用する正味の関節反力を推定した。この関節反力の下、ステムおよびメタルバックを剛体、ライナーを弾性バネとする剛体-バネモデルを構築し、応力解析を行った。その際、ライナーCADモデルの摺動面を形成する3角メッシュを離散要素とし、各メッシュに仮想的に配置したバネの変形により応力を計算した。動作サイクル中の摺動面応力や接触面積の変化をリアルタイム計算でき、屈伸動作の際に接触面積の変化に伴った大きな応力変化が観測された。本研究で展開した手法は運動測定から数値解析までの過程が簡単、また患者独自の骨モデルと運動データを使用するpatient specific解析となっていることから、有用性が高いと結論された。
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