研究概要 |
本研究は,三次元接合体端部のナノ領域の応力特異場に着目して,古典連続体力学の適用限界と表面応力の特異応力場への影響を明らかにし,ナノメカニックス連続体力学の適用範囲を明らかにしようとするものである. 1.シリコンチップを内蔵する接着接合体のマイクロサイズの特異応力場におけるひずみ分布をデジタル画像相関法により求めることができた.デジタル画像相関法に用いたデータはデジタル顕微鏡により取得した.特異ひずみ場の特異性のオーダは三次元特異場の固有値解析で得られたものとほぼ一致した.従来は二次元接合体の理論に基づいて特異応力場の特性を実験で調べていたが,実際には三次元接合体として扱う必要があることを示した. 2.実験では原子レベルの鋭さを有する接合体を製作することは難しいため,分子動力学法により接合体を作成し,外力に対する接合体端部の応力特異場の特性を調べた.その結果,原子レベルの応力分布でも特異性を示すことがわかった.また,当研究者により提案されたナノメカニックスの境界条件を用いて,異方性接合体の特異性のオーダを求める特性方程式を求めることができた.この式は,界面特性が界面端からの距離の関数である場合にだけ,解くことが出来る.そこで,分子動力学法を用いて界面特性を界面端からの距離に対して定式化した.その関数を用いて特性方程式から得られた原子レベルの特異性のオーダを用いることにより,ナノ特異応力場の応力分布を高精度に表すことができることを示した.これは,当初の研究目的であるナノメカニックスの適用の有用性を示すもので,従来の連続体力学の適用範囲を拡張する成果である.古典連続体力学の適用範囲は1nm以上で,それより小さい領域においては界面特性を考慮した理論により分子動力学の結果を表すことが可能である. 3.異方性と等方性の接合体の基本解を境界要素法プログラムに導入した.
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