研究概要 |
マイクロスケールの機能素子や要素に対する要求は,近年,急速に多様化している.そこで本研究は,センサー等に応用する立体的な薄膜微細素子の開発のため,金型を使用しないフレキシブルでかつ迅速なマイクロ塑性加工技術を新たに開発することを目的として実施された.また成形した薄膜微細素子に,必要に応じて,コーティングやエッチングを施して高機能化を図るとともに,マイクロ塑性加工の基礎となる金属箔の極めて特異な変形機構を学術的に解明することも目的のひとつである. 最初に,薄膜のマイクロインクリメンタルフォーミングを実現するため,先端半径10-100μmの超硬工具を適宜用い,厚さ12μmのアルミ箔上に種々の形状を成形した.底辺1mmのピラミッドの成形では,仰角64°(先端の半頂角26°),伸び128%の成形を実現した.通常の引張り試験での伸びが3%程度であることから,薄膜の微細加工において本成形法が十分に適用可能であることを明らかにした.さらに,底辺50μmのピラミッド,自由曲面形状として高さ150μm,幅100μm,押出し高さ25μmの微細文字を成形した. 次に成形した薄膜微細素子の高機能化を図るため,多数の四角錐台を成形したアルミ箔にセラミックコーティングを施し,さらに,四角錐台の部分だけを選択的にエッチングする方法を開発した.四角錐台の底辺の長さは71μm,セラミック薄膜の厚さは約3μmである.これより,インクリメンタルフォーミングで成形した金属箔を犠牲層として,自由形状のセラミック薄膜が成形できることが明らかになった. 最後に,マイクロインクリメンタルフォーミングの特異な成形機構を,力学的モデルとAFM観察から検討した.ピラミッドのコーナ部は損傷が最初に生ずる場所であり,これによって成形限界が決まるので,仕上げられたコーナ部の特徴をAFMで観察し,仕上げ面粗さが悪いこと,これが工具と薄膜との接触面積と関連があることなどを明らかにした.
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