研究概要 |
マイクロスケールの機能素子や要素に対する要求は,近年,急速に多様化している.そこで本研究は,センサー等に応用する立体的な薄膜微細素子の開発のため,金型を使用しないマイクロ塑性加工技術の新たな開発を昨年度に引き続き実施した.また成形した薄膜微細素子に,必要に応じて,コーティングやエッチングを施して高機能化を図るとともに,マイクロ塑性加工の基礎となる金属箔の成形限界について,箔の種類の影響を検討した. 最初に,マイクロインクリメンタルフォーミングにおける箔の成形限界を高めるため,厚さ12μmアルミ箔に対しては先端半径10μmの超硬工具を,厚さ8μmのステンレス箔に対しては先端半径100μmの超硬工具を使用し,種々の形状を成形した.アルミ箔での代表寸法は100μm,ステンレス箔での代表寸法は1mmである.アルミ箔の成形では,寸法の減少にほぼ比例して工具の送り速度を低下させること,ステンレス箔の成形では,一回の等高線加工の後に,工具を箔から引き上げ,箔に蓄積した残留応力を開放することが,精度と成形限界の向上に大きく寄与することを明らかにした.達成した伸びは,アルミ箔とステンレス箔においてそれぞれ162%と64%であり,通常の引張り試験での伸び(それぞれ3%程度と1%程度)に対し,極めて大きな変形が実現した. 次に成形した薄膜微細素子の高機能化を図るため,多数の四角錐台を成形したアルミ箔に比較的低温でセラミックコーティングを施し,さらに,四角錐台の部分のアルミ箔だけの選択的なエッチングを試みた.この方法をTiNとHfO_2のコーティング膜に適用したところ,良好な結果が得られることが分かった. 最後に,ピラミッドの成形におけるアルミ箔とステンレス箔の成形限界について検討した結果,アルミ箔ではコーナ部での2軸の引張りひずみの和が一定値に達した時,ステンレス箔では側面の伸びひずみが一定値に達した時に成形限界を示すことを明らかにした.
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