研究概要 |
(1)把持時の力学的状態を推定可能なシミュレーション機能の開発 MRI計測より得られたデジタルハンドモデルの内部に,生理的筋応力二乗総和の最小化により,把持時の接触力分布,5指分の屈筋・伸筋の筋発揮力分布,ならびに手の骨の関節作用力を推定できるシミュレーション機能を実装した.また実験結果との比較より,本モデルが最小保持力時の手指接触力と主要活動筋腱力を,平均誤差1~2Nの精度で推定できることを実証した.また筋腱力総和と接触力総和の比で表される「快適性評価指標」を考案し,これが主観的な快適性評価値と高い相関をもつことを検証した. (2)高速・高精度な手指の接触変形シミュレーション機能の開発 手表皮の変形挙動に対し,変形が局所限定されるQuasi-rigidモデル,力-変位を線形化するBoussinesqu近似,さらに人体組織の特徴である体積保存性制約を加えた接触変形シミュレーションモデルを新たに考案した.接触力,変形量,接触面積を実験値と比較した結果,この3者を高い精度で近似可能なことを実証した.またシミュレーション時間も手指で1sec以下,掌でも30sec以下と高速であることが判った. (3)市販CADシステムと統合された形状・構造変更案の探索機能の開発 製品形状の3次元メッシュモデル上で,筐体寸法を直接変形できるメッシュの寸法駆動変形法,ならびに変形後のメッシュ形状の歪みを改善するODTに基づくメッシュ品質改善手法を開発した. (4)製品別設計改良ケーススタディの実施 研究協力者の企業の製品であるプロ用自転車ハンドルを対象に「快適性評価指標」を導出し,それらと官能検査の得点に劣る製品は,快適性評価指標も低い値を示すこと,またその原因が,手指関節角度差と接触面積の違いに起因することがシミュレーション結果から推定できた.
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