研究概要 |
本研究の目的は,米ぬかを原料とする硬質多孔性炭素材料RBセラミックス粒子を樹脂材料及び金属材料に充填することにより,新しい低摩擦・耐摩耗複合材料を開発し,摺動材料として応用することである.平成23年度では,鉄道集電用パンタグラフすり板の材料として従来用いられている銅とピッチコークス等を原料とするカーボンの複合材料(Cu/C複合材料)にRBセラミックス粒子を配合した複合材料(Cu/C/RBC複合材料)の通電条件下における摩擦試験を行い,Cu/C/RBC複合材料の鉄道集電用パンタグラフすり板への応用可能性を検討した.実験は,集電材摩耗試験装置を用いて,模擬架線である無酸素銅を相手として,アーク放電を伴う通電条件下及びアーク放電の伴わない通電条件下の2条件下で摩擦試験を行った.幅広い通電電流(100~400A),すべり速度(6.9~27.8m/s)及び垂直荷重(49N)において実験を行った.アーク放電を伴う通電条件下において,Cu/C/RBC複合材料は,Cu/C複合材料と同等の耐摩耗性を示し,RBセラミックス粒子を配合することによる耐摩耗性の低下が見られないことが判った.一方,アーク放電を伴わない通電条件下において,Cu/C/RBC複合材料は,Cu/C複合材料に比べ,摩擦係数を77.4%,自身の摩耗を98.0%,相手材料の摩耗を22.6%低減できることが判った.このことから,同複合材料は,摩擦仕事によるエネルギーロスを低減し,相手架線の摩耗を低減した上で長寿命を実現できるすり板材料として適用が期待できることが見出された.また,摩耗面のSEM観察により,Cu/C/RBC複合材料の耐摩耗性発現メカニズムを明らかにするとともに,ヘルツ最大接触圧力,最大高さ粗さ,破壊靱性値及び摩擦係数を用いた同材料の比摩耗量の予測式の導出に成功した.
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