研究概要 |
本研究の目的は,永久磁石を用いずに,多層構造により高い推力密度をもつ超精密・超高速平面モータを実現することにある.そのために,提案した新しい電磁アクチュエータユニットの有効性を,磁場解析により既に示しているが,実現に際しては,利用できるコア用積層鋼板の厚さや物性に制約があり,潤滑特性の影響を調べ,従来にない構造をもつ電磁アクチュエータの加工・組立て方法を明らかにする必要がある.そこで本年度は,それら試作上の制約の影響や今後の課題を明らかにするために,多層構造の電磁アクチュエータユニットを利用した1軸機構を設計,試作し,基本特性の測定を通して,目的達成のための課題を調べた.得られた結果は次の通りである. 1. 電磁アクチュエータユニットを含む1軸機構の設計と試作 入手可能な磁性材料を調べ,電磁アクチュエータのコアユニットを設計,試作した.コアの一部は市販品を利用したが,最も重要な部分は,加工・組立て方法を検討し,新たに試作した.可動子・固定子には,低摩擦化とギャップ低減を目指して薄膜フィルムを用いたが,製作時のフィルム変形が大きくかつ十分な精度で可動子コアを配置ができなかった.そのため少なくとも可動子については,今回の結果を基礎に,加工・組立て方法等を含め,再検討する必要があることがわかった. 2. 試作1軸機構の静特性・駆動特性評価 駆動信号を適切に設定することにより,基本的な動作は可能で,可動子,固定子の積層数を増加させることにより,推力向上が可能であることを確認した.しかし可動子・固定子間の摩擦の影響が大きく,印加電流の殆どが,摩擦に起因する起動推力発生のために使われている.そのため摩擦の影響を低減して潤滑特性を向上させことが,本モータの実用化のために極めて重要であることが明らかになった.
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