研究概要 |
本年度,従来研究から世界最先端の小型化を実現,低溶血性が実証された2自由度制御型磁気軸受を搭載した遠心血液ポンプを対象に,磁気軸受の外乱オブザーバを応用した血液流量推定,磁気軸受制御系のロバスト設計,および,磁気軸受用電磁石の不具合に対するフォルトトレランスなどの高信頼化の研究を実施した.さらに,血液ポンプのさらなる小型化を目指すため,1自由度制御型磁気軸受モータを搭載した血液ポンプの設計,試作も目指した. その結果,1)外乱オブザーバによりインペラの半径方向力を推定し,流量を測定する方法を新たに提案した.拍動流ポンプと遠心血液ポンプを組み合わせた循環補助シュミュレータを構築し,流量推定実験を実施したところ,医療用超音波流量計との誤差は15%以内であった.2)H∞制御や外乱オブザーバを用いた磁気軸受のロバスト制御系の適用を検討し,血液未充填,充填にかかわらずインペラの安定した磁気浮上を実現した.3)磁気軸受の構成する4個の電磁石のうち,3つまでも破損しても,非接触浮上が可能な制御法を開発した.また,電磁石が1~3個破損した状態でも,循環補助シュミュレータに接続した拍動流下において,インペラの非接触回転が実現された.4)1自由度制御型磁気軸受モータを搭載した血液ポンプを試作し,特定の回転領域において非接触浮上を確認した.但し,組み立て精度不足による磁気アンバランスのため,動圧効果の少ない低速回転域,不釣り合い力の大きな高速回転域での非接触回転は未達成であり,22年度はその問題の解決を目指す.
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