研究概要 |
1. 極低摩擦を実現するカーボン系薄膜の形成 平成22年度には前年度の結果をもとにナノ周期積層膜を主体とするカーボン系薄膜の形成条件を適正化し,カーボンと金、銀およびカーボンとチタンカーバイトの積層膜を形成した。さらにその構造,組成をラマン、オージェ電子分光で評価した。さらに原子間力顕微鏡を用いてナノメートルスケールの摩擦・摩耗など機械特性を評価している。具体的には原子オーダのナノ摩耗深さと物性値の変化から積層状態などを評価している。 さらにカーボンを主成分として金属など他種材料を組み合わせたナノコンポジット膜を中心に構造と境界潤滑特性の関係を追及し、境界潤滑下でμ=0.05以下の低摩擦を実現した。添加金属と膜形成条件を含め最適化を図り,その結果を研究成果として論文にまとめている。 2. 境界潤滑特性の評価と極低摩擦の実現 カーボン系薄膜,カーボン系積層膜,ナノコンポジット膜について,合成潤滑油による境界潤滑特性の検討を行っている。この際,購入した卓上電子顕微鏡、既設の原子間力顕微鏡などで摩擦面,相手試験片の形状,形態測定を行い,低摩擦および低摩耗が得られる条件を検討した。この結果、現状で,自動車のエンジンに実用化されている水素フリーDLC膜のポリアルファオレフィン潤滑におけるμ=0.06より低い値を実現している。 3. 摩擦生成物の評価による摩擦生成物の生成メカニズムの解明 境界潤滑条件下で表面に形成される反応生成膜が大きな影響を与えていることが明らかになりその形成メカニズムを検討している。10nm以下の力学特性評価として,評価方法として,機械特性評価に電気的特性の評価を複合し,比較検討している。この際,反応生成物の機械的なナノ評価と電気特性評価を実現している。
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