研究概要 |
1.極低摩擦を実現するカーボン系薄膜の形成 前年度の結果をもとにカーボン系ナノ周期積層膜、ナノコンポジット膜を取り上げ,カーボンを主成分とする物性の異なったナノ構造薄膜を形成した。その構造,組成の評価は透過型電子顕微鏡(TEM)およびオージェ電子分光法(AES)などの表面分析法を活用し、ナノメートルスケールの摩擦・摩耗など機械特性の評価と対比させた。具体的には原子オーダのナノ摩耗深さと物性値の変化から3次元のナノ構造を定量的に評価し,材料構成と膜形成法にフィードバックさせた。さらにカーボンと炭化チタン、金を組み合わせた積層膜、ナノコンポジット膜を形成し、膜の構造と境界潤滑特性の関係を追求した。その結果から境界潤滑下で低摩擦が得られる条件を適正化し,研究成果として論文にまとめている。 2.境界潤滑特性の評価と極低摩擦の実現 カーボン系積層膜,ナノコンポジット膜全試料について,境界潤滑条件を変化させながら検討を行ない,摩擦面,相手圧子の形状,形態測定を行い,低摩擦および低摩耗が得られる条件を明らかにした。その結果として金属添加ダイヤモンドライクカーボン(積層、ナノコンポジット)膜および表面改質ダイヤモンド膜の境界水潤滑により目標としている極低摩擦を実現している。 3.原子間力顕微鏡による摩擦生成物の生成メカニズムの解明 原子間力顕微鏡(AFM)のフォースモジュレーション法を適用し、数nm以下の極薄膜の微細評価を実現し,機械的なナノ評価と電流分布の評価結果を比較し、摩擦によって形成される反応生成膜を確認した。これらは機械作用と電気作用を複合した新しい表面評価法として磁気ディスク潤滑膜の評価に応用している。さらにこれらの結果を研究成果としてまとめている。
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