研究概要 |
気液界面での境界条件を,仮想流体を用いて満足させることにより,界面での非平衡熱物質移動を解析し得るGhost Fluid法に基づく新しい数値計算手法を構築した.本手法は,現象の複雑さに応じて格子解像度を変化させる適合格子の利用により,界面を効率的かつ高精度に捕えることができる.本手法を気泡崩壊問題に適用した結果,本手法により,既存の手法では解像できなかった界面の微細構造を捕えた上で,非平衡相変化(蒸発・凝縮)を解析し得ることが示された.また,蒸気相が急激に圧縮される液体ジェットの衝突時や気泡の再膨張時において気泡内から周囲液体に向かう大量の熱拡散が生じること,気泡崩壊時に微細な界面構造が形成されることにより界面における相変化量が増大すること等の知見を得た.さらに,流体の粘性を考慮したGhost Fluid法を構築し,粘性が気泡崩壊に及ぼす効果を検討するとともに,蒸気と非凝縮性気体の混合気体を含む気泡の崩壊現象を解析する手法を提案した. Ghost Fluid法を用いて,チャンネル内に分布する円筒気泡群と衝撃波との干渉問題を数値計算した.様々なボイド率に対して,数値計算で得られた圧力波の伝播速度を,等温均質気液二相媒体において定義される圧力波の伝播速度と比較した結果,いずれのボイド率においても,数値計算で得られた伝播速度は,等温気液均質媒体を仮定して得られた伝播速度と10%以内の誤差で一致した. 壁面近傍で高強度パルスレーザを集束させることにより生成したレーザ気泡の挙動を高速度ビデオカメラで観測し,気泡と壁面間の距離と気泡の変形および移動特性との関係を明らかにした.また,微小気泡群を含む気液二相縮小拡大管流れ中にレーザ気泡を生成し,その生成時に放射される圧力波の伝播を高速度ビデオカメラで観測した結果,気泡数密度の増加に伴い,ボイド波の振幅が減衰し,その伝播速度が低下することが示された.
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今後の研究の推進方策 |
目標に掲げたGhost Fluid法を用いた「非平衡相変化を考慮して非球形気泡の崩壊を解析し得る数値計算手法」を構築したので,今後はこの手法の妥当性を実験的に検証する.具体的には,壁面近傍でのレーザ気泡の成長崩壊実験を本手法でシミュレートする.また,本手法は,界面での温度ジャンプを記述する相変化モデルとして任意のモデルを扱うことができるので,種々の相変化モデルを用いたシミュレーションを行い,各種相変化モデルの優位性について検討する.さらに,本手法を3次元に拡張する.
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