本研究は、内部現象観察と電流密度分布の同時計測、内部水分状態の瞬時凍結法を用いた観察、ならびに並列演算可能な高密度比対応LBM法により、燃料電池内の気液輸送現象について解明することを目的としたものである。本年度の研究により、下記の知見を得た: (1)凝縮水の凍結固定化法は拡散層内の凝縮水分布を知る上で有用な手法であることを確認した。 (2)拡散層の繊維方向を異方化することにより、電池性能を向上できることがわかった。凍結固定化法による観察の結果、リブ下の凝縮水分布が繊維方向によって異なることが原因と考えられた。 (3)金属製多孔体セパレータは凝縮水を拡散層表面からセパレータ内にすばやく引き離す作用があり、少ない空気流量で良好なフラッディング特性を示すことが明らかとなった。 (4)LBMシミュレーションにより、少ない圧力損失で凝縮水を良好に排出できるセパレータ形状条件を明らかにすることができた。 (5)氷点下起動では、-20℃では触媒層内に氷が形成されるのに対して、-10℃では触媒層とMPLの界面に氷が形成されることがわかった。また、この差異により常温復帰後の運転特性が異なることが明らかとなった。 (6)Cryo SEMを用いた観察から、触媒層における水は蒸気状態であり、MPLは蒸気相と液相を都合よく分離する作用を有することが推察された。
|