研究概要 |
本研究は,ふく射の空洞量子効果をより効率的に活用できる機能性構造体を製作し,分子の非平衡状態を空洞内で実現することで水蒸気-メタン改質反応を低温かつ高効率で行うことを目的としている.研究2年目の本年度は,前年度行ったミクロ構造体の球形空洞内面に焼結する触媒物質の選定により数種の物質を用いて改質実験を行った.この実験と平行してミクロ構造の熱ふく射定在波と分子の熱力学的非平衡状態における反応機構の基礎的知見を得るために,既存の計算コードを用いたミクロ領域におけるふく射特性の理論研究を進めた. 改質実験では,前年度に作成したセラミックス焼結炉を改造し,マスフローコントローラーおよびガスクロマトグラフにより構成されるメタン改質実験装置を構築した.現有の温度計測装置やコンピュータを組み合わせた自動計測システムを構築することで,パラメトリックな実験に対応できるようにした.このシステムに高温のメタンと水蒸気を透過させて,水素の反応速度計測を行った.実験では加熱炉の温度を調整して種々の反応温度,流量を変化させることで反応ガスのミクロ構造体での滞留時間を調整し,それぞれのパラメータについてデータ取得をした.併せてこれまので改質充填層との比較を行うために,従来型の改質充填層を制作し,ミクロ構造体の改質実験との対比実験を行った.これにより高温側では改質割合の差が顕著になることを定性的にとらえることができた. ふく射特性の理論的研究については,ミクロ構造体がふく射特性に及ぼす影響を評価するために,物質およびミクロ構造のサイズをパラメータとした解析を行い,広範な波長領域におけるふく射特性を評価した.得られた結果より,水素改質における最適パラメータの詳細検討を行った.
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