研究概要 |
本研究は,熱エネルギーを,赤外線放射体表面近傍に生ずるエバネッセント波,およびその強電界により光電池表面の薄膜電極に誘起される表面プラズモンを介して,局所的に光電池内電界を増強させることによって,電力へと変換する高密度な光起電力発電を行うとするものである.最終年度の本年度は,表面積5mm×6mmのn型(GaSb表面に,厚さ5nmのNi薄膜をスパッタしたショットキー電池,ならびに厚さ2μmのアンドープGaSbをエピタキシャル成長させたp-n接合電池を製作し,タングステン製平滑面エミッター表面を近づけることにより,通常の伝ぱ光に比べてエバネッセント波効果によって,それぞれ4.3倍、3,6倍の発電密度となることを示した.しかしながら,その表面間の距離を正確に測定できていないなど,課題も明らかとなった.さらに,ニッケル製平滑面エミッターを850℃まで加熱し,その表面にシリカ製グラスファイバープローブをナノオーダーまで近づけることにより,エバネッセント波を検出することができた.検出波長範囲が可視光から0.92μmの範囲であったため,近づくにつれ指数関数的に増大するのではなく,プローブがエミッター表面に接触する手前100nmの範囲内において急激にふく射強度が増大することから,その領域でのエバネッセント波による電界強度が極めて高いことがわかった.一方,表面微細構造により局所的に電界強度を増強させることについては,独自に開発した数値シミュレーションによって,対向するピラーアレイ構造表面において,エバネッセント波であるからこそピラー間の隙間にプラズモン波が形成され,その深さ(あるいはピラー高さ)により共鳴周波数を制御できることを見出した.これはエバネッセント波の波長制御が可能となることを示しており,極めて新規な知見であると考えられる.
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