研究概要 |
マイクロメートルスケールの微細かつ複雑な流路を有する新規な試薬反応装置,医療検査機器として注目されるμ-TAS(々イクロ総合化学分析システム),LOC(ラボチップ)と呼ばれるマイクロ流体デバイスの具体的な応用技術として,マイクロ流路内で赤血球(RBC)などの単細胞の特性,とりわけ細胞変形能の異同を短時間でシームレスに分析・選別する方策を検討する.そのために,初年度は以下のとおり,マイクロ流体デバイスと測定回路の試作を行い,流路内での流体制御と電気的センシングを複合的に行える技術確立のための基礎研究,開発を行った: ○流路およびセンサーの試作 対向電極型薄膜センサーの中心に赤血球を配する場合の3次元調和電場解析を行い,赤血球の通過高さや電極寸法がセンサー感度に及ぼす影響を調べた.その結果に基づき,1,000×15μmの断面積を有するマイクロ流路を設計,試作し,そこにセンサーを付設した.マイクロ流路はPDMSとガラスを材料に,ソフトリソグラフィで製作した. ○高速度カメラ撮影によるRBCの変形能計測高速度ビデオカメラと顕微鏡を組み合わせてマイクロ流路内を流れるRBCの撮影を行い,画像処理によってRBCの移動軌跡や形状変化を明らかにした.○薄膜センサーによるインピーダンス測定RBCの電気特性を非破壊で測定するため,誘電分光法を活用してRBCの導電率を見積もり,センサー用インピーダンス測定回路を試作した.電極周りの電気2重層の影響を抑える印荷電圧周波数帯域も決定した. ○RBC形状の調整 せん断流れがRBCを変形させる効果を高めるために,流体の粘性をポリビニルピロリドン(PVP)で純水の10~60倍程度に調整した.また,りん酸緩衝液(PBS)とグルタールアルデヒドを用いて変形を起こさないRBCや球状,うに状のRBCを作り,正常なRBCと比較実験を行った.
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