研究概要 |
本研究の目的は、不凍化蛋白質の凝集を制御することにより、ある特定の時間に、ある特定の領域の氷結晶成長を抑制する方法を確立することである。さらに、その方法に基づき、食品製造・保存や医療における、安全かつ省エネルギーの氷成長制御技術の開発指針を提示することも目的としている。最終年度は、あらたに以下のような結果を得た。 1.深さ0,30mm、幅2.0mm、長さ60mmの微細流路を作成し、その中に不凍化蛋白質水溶液を流した。流路側壁付近を冷却して側壁から氷が発達する条件下において、近赤外カメラを用いて水溶液流中の微小領域における温度分布を測定した。その温度分布から、局所の熱流束を求めた。その結果、平均速度がやや高い場合には、氷表面を通過する熱流束が温度降下と首尾一貫することを明らかにした。また、トレーサー流による速度計測は妥当であった。さらに、蛍光分子を付与した不凍化蛋白質の水溶液流れの蛍光顕微鏡法による測定から、鋸刃状界面の発達が、流れの無い場合と比較して急激で三次元的であることを初めて明らかにした。 2.上記近赤外カメラによる温度計測に用いる近赤外光の波長の妥当性を、他者の研究結果などを用いて検証した。 3.フェーズフィールド法を用いて、壁面から発達する氷と2次元ダクト内を流れる層流過冷却水との相互作用、温度場・速度場を予測する手法を開発した。予測結果の妥当性を議論した。 4.微細流路の測定結果をもとに、同様の微細流路内における、氷粒子を含む不凍化蛋白質水溶液流の観察を行い、氷水混合体の流れにおいても、不凍化蛋白質の影響があることを初めて明らかにした。
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