研究課題
不凍タンパク質(AFP)や不凍合成高分子(AFSP)は、平衡融解点以下で氷の結晶成長を完全に止めたり、また氷の再結晶を抑制したり核生成を抑制するなど、氷に対して特殊な効果を持つことで知られており、熱工学、食品工学、低温生物工学など多くの分野での応用が期待されているが、それらの効果の統一的な理解は進んでいない。本研究課題は、AF(S)Pの凍結抑制メカニズムの解明を目的としている。当該年度は、W/Oエマルションと顕微鏡観察を利用した核生成温度の測定によって、よう化銀(AgI)微粒子を氷核活性物質とした場合にAF(S)Pが氷の不均質核生成に及ぼす影響を調べた。その結果、魚から取れるAFP I、AFP IIIや、不凍合成高分子として知られるポリビニルアルコールは、AgIの氷核活性を抑制し、これらのAF(S)Pが氷核活性物質の存在下でも均質核生成温度近くまで水の過冷却を維持する効果を確認することができた。また、これまで不凍合成高分子として認識されていなかった二つの合成高分子(ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール)も、AgIの氷核活性を抑制することが確認できた。さらに、いくつかのポリフェノール化合物についても、AgIの氷核活性を抑制する効果を確認した。AgIの氷核活性を抑制する効果の大きさはAF(S)Pの種類によって大きく異なっており、このことはAF(S)P分子がAgI表面の氷核活性サイトに対して独自の選択性をもって作用していることを示唆している。そのほか、過冷却水用熱交換器の凍結閉塞防止にAF(S)Pの核生成抑制効果を適用する技術について検討し、実際に小型の過冷却方式の氷スラリー製氷機においてその技術を実証することができた。
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Cryobiology
巻: Vol.64、No.3 ページ: 279-285
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http://staff.aist.go.jp/t-inada/index_jp.htm