研究概要 |
小型で汎用性の高い粘性センサを,MEMS技術を用いて開発することを目的として,研究を行った.本年度は,粘性センサの基本構造の製作方法が完全に確立し,ひずみゲージの内載化にも成功した.また,センサホルダーを製作し,粘度測定を行い,理論と合致する波形を得て,粘度を数%の偏差で測定できることを確認した.さらに,自励発振現象を用いた粘性測定の理論と,実験的検証において,新たに3件の特許を出願し,実験的検証によって,これまでの振動粘度計では測定が困難であった高粘性液体の粘性測定に成功した.具体的には次の成果が得られた. (1)MEMS構造の製作方法の確立(藤井,松本,山本) ・MEMS粘性センサの性能評価 MEMS構造を製作するための,製作プロセスの研究を行い,バルクウェーハを用いることができる新しい構造を提案し,製作の効率化を図るとともに,プロセスの最適化を行い,基本構造の製作方法に関してはほぼ完全に確立した.テストシステムを用いて,粘度計としての基本性能を評価し,理論と一致する周波数応答曲線を得た. ・変位センサの内装化と性能評価 MEMSチップ上に作製した変位センサを形成する製作プロセスの開発を進め,金属ひずみゲージ式の変位センサ作成をチップ表面に作成した.センサの性能評価を行い,ひずみの検出が可能であることを確認した. ・センサホルダを製作し,センサチップと一体型のワンパッケージセンサを製作し,性能評価を行った.概ね,粘度標準液の校正値から数%以内の偏差で測定可能であることを確認した. (2)非線形振動制御と粘度測定原理の開発(藪野,黒田) ・ファンデルポール型自励振動による粘度測定原理の検討 制御部を改造した市販の振動型粘度計の実験システムを用いて,自励振動の発振限界の線形フィードバックゲインの値を用いた粘度測定の原理の検証を進め,低粘度から,高粘度まで,同一の振動子で粘度を測定可能であることを確認した.線形弾性,線形粘性,非線形粘弾性の測定方法に関する新たな理論を発案し,3件の特許を出願した. ・テスト装置を用いた粘度測定原理の確認 モックアップタイプのテスト装置を用いて,自励発振現象を用いた,粘性測定の検証を進め,従来の振動式粘度計の測定範囲外の高粘性液体の測定が可能であることを立証した.
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