研究概要 |
力覚を有する内視鏡手術ロボットシステムの遠隔治療への適用のために,通信遅れを考慮した位置と力をフィードバックする制御方法を提案し,安全性を日米間の遠隔実験によって定量的に評価することを目的とし,研究1年目に下記の成果を得た. 1. スレーブ側鉗子先端の把持駆動のために,空気圧アクチュエータを先端部に組み込んだ鉗子マニピュレータ(IBIS IVと命名)を試作した.本システムは空気圧配管で動力を伝達することから,他の関節の干渉を受けない利点を有している.また,閉じた状態で約20N大きなトルクが発生できる.in vitroおよびin vivoの両実験で試作した鉗子の有効性を確認した. 2. システムの安全性評価として,豚を用いたin vivo実験を2回実施し,本システムを用いて縫合作業が安全に行えることを確認した.実験データを取得し,力覚提示有無の差を定量的に評価した.また,日米を含む世界の9つの研究機関と協力して,異なるマスタ,スレーブ間での遠隔制御実験を実施し,ブロック移動実験によって,申請者らが開発したマスタ・スレーブ型手術ロボットシステムの有効性を示した. 3. 遠隔手術における通信遅れを補償した制御システムの開発として,申請者らが提案した位置と力をフィードバックするModified Wave Variable法を開発したロボットシステムに実装し,実際のネットワーク回線を用いて,約30Km離れた区間での遠隔制御実験を実施した.さらに,通信遅れの影響を考察するため,疑似的な遅れを挿入した実験を行い,模擬縫合作業を複数の被験者で実施した.その結果,提案する制御方法が位置と力の安定性に優れ,特に力の振動が抑制されることが定量的に示された。また,往復の通信遅れが200ms以上では,提案する方法が従来の方法より優れていることを明らにした.
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