研究概要 |
本年度は指タップ運動を対象として,(1)磁気と生体機械特性を利用して指間に働く力と運動の関連性を明らかにし,指タップ運動中の自律神経系活動解析を行うための方法論を確立すること目的として研究を実施した.指タップ運動を用いて医療診断を行うためには,指の運動やリズムなどを高精度に計測して評価する必要がある.研究代表者は昨年度までに,計測した指先間距離から指タップ時の指間力を評価できる可能性を示していた.本年度は,指先力推定法の精度を検証し,指腹がヒステリシス特性を有することを明らかにするとともに,新しいモデルを考案した[バイオメカニズム学会誌].さらに,指タップ運動のインピーダンスパラメータの推定を可能とした[Review of Scientific Instrument].また,神経支配された運動機能状態を正確に評価するためには,力学的な指タップ運動の評価だけでは不十分であり,指タップ運動中の自律神経状態を的確に把握する必要があると考えられる。本年度は,まずパルスオキシメータと非観血連続血圧計を用い,パルスオキシメータから求めた指尖の容積脈波(血管の容積変化に相当)と血圧(血管内圧)の比から自律神経系の活動をリアルタイムでモニタリングできるシステムの開発を行った[Medical and Biological Engineering and Computing].また,自律神経活動と機械的侵害刺激を対応付け,疼痛の定量的評価を試みた[医療機器学]このモニタリングシステムを指タップ運動解析システムと併用することで,運動中の自律神経活動をリアルタイムで評価でき,パーキンソン病などの神経疾患に対するより客観的・定量的な評価が実現できると考えられる.
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