研究課題/領域番号 |
21360118
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
辻 敏夫 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90179995)
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研究分担者 |
吉栖 正生 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (20282626)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 指タップ運動 / 血管内皮機能 / 箔状圧電センサ / パーキンソン病 / 指タップ力 |
研究概要 |
本年度は指タップ運動を対象として, 磁気と生体機械特性から安定して指間に働く力を推定するために,指タップ運動計測装置の再現性を評価する方法ならびに指タップ運動中の自律神経系活動解析を行うための方法論を確立すること目的として研究を実施した.指タップ運動を用いて医療診断を行うためには,指の運動やリズムなどを安定かつ高精度に繰り返し計測・評価できる必要がある.研究代表者は昨年度までに,計測した指先間距離から指タップ時の指間力を評価できる方法を考案した.本年度は,指先力推定法の精度を検証するために,指タップ運動計測に用いる磁気センサの計測における再現性を評価し,磁気センサを用いて十分に指タップ運動を計測可能であることを示した [計測自動制御学会誌]. また,神経支配された運動機能状態を正確に評価するためには,力学的な指タップ運動の評価だけでは不十分であり,指タップ運動中の自律神経状態を的確に把握する必要があると考えられる.本年度は,指タップ運動中に自律神経活動を計測するために,新しい対数線形血管粘弾性モデルを考案した.さらに,小型軽量な箔状圧電センサを用いて皮膚表面から非観血に血管の粘弾性特性を計測・評価する方法論を開発 [電気学会論文誌,International Journal on Electrical Engineering and Informatics]した. 指タップ運動中の自律神経活動評価を実施し,若年群と中高年群の指タップ運動中の自律神経活動に差異が認められた[日本人間工学会口頭発表].この結果とパーキンソン病などの神経疾患患者の自律神経活動の関連性については今後調査が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
頸動脈超音波検査に適応した新しい自律神経活動の評価モデルや,末梢血管を対象とした血管粘弾性特性の評価法を確立したのみならず,対数線形血管粘弾性モデルを新たに考案した点.また,高精度な指タップ運動と指タップ力の計測のための磁気センサの再現性評価法を確立するのみならず,箔状圧電センサを用いた新しい血管粘弾性特性の評価法を確立した点.これにより,様々なシーンにおいて被験者の自律神経活動を定量的に評価可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に提案した自律神経活動評価法,ならびに昨年度までに構築してきた指タップ力評価法をベースとしてパーキンソン病患者を対象とした指タップ運動の計測実験ならびに自律神経活動の評価実験を実施することで,パーキンソン病患者の自律神経活動と運動タスクの関連性について調査する.自律神経活動の評価には,パーキンソン症候の評価に用いられるチルト試験を適用し,血管粘弾性インデックスにより起立前後の神経活動の定量評価を実現する.さらに,指タップ中の力を生成する脳機能モデルに着目し,指タップ運動などのリズミックな運動を生成するための運動モデルの構築を試みる.
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