研究概要 |
近年死因として注目されている外傷性脳損傷の一つであるびまん性軸索損傷(DAI)の生成機序を、外部衝撃と軸索損傷との関係から解明するために、外部衝撃入力時に細胞培地に発生するひずみおよびひずみ速度と軸索損傷および神経細胞の状態変化との関係を,実験により定量的に評価した.具体的には,(1)衝撃試験装置を用いて培養神経細胞に500Gの加速度を1ms負荷後,トリパンブルー染色により細胞死亡率を,乳酸脱水素酵素(LDH)活性測定による細胞損傷率を算出することにより、ひずみ速度およびひずみと神経細胞損傷との関係を検討した.培養ディッシュの重さを変えることで,ひずみ速度5-20s^<-1>,ひずみ0.5-2.0%の範囲で実験を行った.その結果,ひずみ速度,ひずみの増加に伴い細胞死亡率,細胞損傷率ともに増加した.ひずみ速度20s^<-1>,ひずみ2.0%負荷時において,細胞死亡率26%,細胞損傷率30%であった.また,ひずみの負荷方向と軸索の伸長方向を定量的に評価するために,(2)培養神経細胞における神経突起の伸長方向制御を検討した.ポリカーボネート基盤に,切削加工によるV溝,イオンビームエッチングによる段差,レーザ照射による丸溝を,幅70-500μm,深さ10-40μmの範囲で微細形状を加工した.また,加工前もしくは加工後に細胞接着性を促進させるPoly-L-Lysineをコーティングした.その結果,加工方法に因らず,神経突起はランダムに伸長したが,加工前にコーティングを施すことで微細形状を加工した部分には神経突起が伸長しないことが分かった.その結果を受けて、培養基盤のコーティングを微細加工により剥離させることで,神経突起の伸長方向を制御することが可能となり、平成22年度には軸策の伸張方向にひずみを与える、より詳細な実験を行うことが可能となった。
|