研究概要 |
近年,交通事故やスポーツ事故時の頭部外傷を原因とする高次脳機能障害が大きな社会問題となっている.外傷性脳損傷の一つであるびまん性軸索損傷(DAI)の生成機序を外部衝撃と神経損傷の関係から解明するため,本研究では,外部衝撃における脳組織の変形が神経損傷に与える影響を検討した,培養神経細胞に一軸引張による衝撃ひずみ(ひずみ15-100%,ひずみ速度30-80/s)を負荷し,5分後-24時間後の細胞形態を計測した.また,衝撃ひずみ負荷24時間後の正細胞と死細胞を評価した,その結果,衝撃ひずみを負荷した細胞において,神経突起の本数が有意に減少し,負荷直後より神経突起の局所的な膨張がひずみ・ひずみ速度依存的に増加した.また衝撃ひずみ負荷後の細胞死もひずみ・ひずみ速度依存的に増加したことから,神経突起の形態変化と細胞死との間に相関関係があることが認められた,一方,神経突起損傷をより定量的に解析するため,微細加工技術を応用することで神経細胞の配置や神経突起の伸長方向を培養段階で誘導し,神経突起に対するひずみの作用方向を制御した.生体適合性材料であるPDMS(Polydimethylsiloxane)を用い,細胞サイズと同等なマイクロトンネル構造を細胞培養面に加工することで,神経突起の伸長方向を制御可能であることを示した.その結果,神経突起の伸長方向へのひずみの大きさと神経突起の膨張数に相関関係が認められた.また,通常培養により無秩序に伸長した神経突起と微細構造を用いて任意の方向に伸長した神経突起に対して損傷率を比較した結果,方向性を持たせた神経突起でより高い損傷率を示した.
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