研究概要 |
平成22年度には以下の項目について研究を実施した。(I)圧電トランスの最適設計のための等価回路定数解析を行った。有限要素法により,主共振とスプリアス振動の振動解析,アドミタンス特性の解析を行って,その結果を基に等価回路定数を算出した。このようにして求めた等価回路定数を用いて圧電トランスの効率計算を行って,最適な使用条件を明らかにした。(II)圧電トランスのパワー試験用システムの構築を行った。圧電材料はパワーが増大していくと非線形性により発熱が増大し,またその共振特性にジャンプ現象という不安定現象が発生して測定不能になる。この不安定現象を制御して安定化し測定可能にした。制御方法には,(a)アナログ回路方式と(b)ソフトウェア方式を構築し,両者とも安定制御に成功した。ソフトウェア方式については論文発表を行った。(III)圧電トランスの駆動・制御回路の作製を行った。圧電トランスの駆動にはFETによるスィッチング回路が用いられる。このFETスィッチング回路は高周波になるに従ってその内部容量によって効率の著しい低下が起こる。本研究では,圧電トランスとFETの間に挿入するチョークコイルによりこの内部容量の影響の低減を計った。チョークコイルの値を細かく調整し,圧電トランスとFETスィッチング回路を含む全体回路の効率を詳しく調べた。この結果,効率最大となる最適なチョークコイルの値ならびに駆動周波数が明らかとなった。この結果については学会発表を行った。(IV)圧電トランスのパワー測定を行った。22年度導入の主要機材であるディジタルパワーメータを用いて圧電トランスの入力部,出力部ならびに駆動制御回路部におけるパワーを測定した。これにより,各部のパワーを分離して測定でき,従って各部の損失パワーも明確にできたので,圧電トランス型ACアダプタの設計指針を明かにすることができた。
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