研究概要 |
エネルギー利用の効率化を可能とする環境調和型エネルギーシステムの構築に向けたブレークスルー技術として,世界各国において実用化に向けた研究開発が進められている高温超伝導ケーブルがある.本研究では,高温超伝導ケーブルの実用化に対する技術的障壁の一つとなっている極低温環境下の電気絶縁特性を調査し,高温超伝導ケーブルの合理的な絶縁設計・絶縁試験に資するデータを取得・体系化することにより,環境調和型エネルギーシステムにおける高温超伝導ケーブルの信頼性を確保することを目的としている.本年度の主な知見は以下の通りである. (1)部分放電開始電界(PDIE)の絶縁厚さ依存性 高温超伝導ケーブルの基礎的な絶縁環境を模擬した大気圧液体窒素/ポリプロピレン(PP)積層テープ複合絶縁系において,PP積層テープの絶縁厚さをパラメータとしてPDIEを測定・比較した.その結果,PDIEは統計的電界体積SSLV(絶縁厚さなど,絶縁上の弱点の総量と等価)の増加とともに減少し,その下限値は21.6kV_<rms>/mmであることを明らかにした. (2)過冷却液体窒素中の絶縁特性 高温超伝導ケーブルの実用的な冷却・運転環境を模擬した過冷却液体窒素/PP積層テープ(C-Type)複合絶縁系において,圧力(P=0.1~0,3MPa:絶対圧)と温度(T=65~77K)をパラメータとしてPDIEを測定・体系化した.その結果,PDIEは圧力上昇とともに増大・飽和し,温度低下とともに直線的に増大する傾向にあること,P=0.3MPa,T=65KのPDIE(35.0kV_<rms>/mm)は,大気圧沸騰状態(P=0.1MPa,T=77K)のPDIEの1.43倍に達することを見出した.
|