研究概要 |
本研究では,高温超伝導ケーブルの実用化に対する技術的障壁の一つである極低温環境下の電気絶縁特性を調査し,高温超伝導ケーブルの合理的な絶縁設計・絶縁試験に資するデータを取得・体系化することにより,環境調和型エネルギーシステムにおける高温超伝導ケーブルの信頼性を確保することを目的としている.本年度の主な知見は以下の通りである. (1)部分放電開始のV-t特性 超伝導ケーブルの試験電圧を決める上で重要な寿命特性(V-t特性)について,特に部分放電開始のV-t特性における寿命指数(n値)を調査した結果,過冷却液体窒素(0.3MPa,77K)中においてn=80が得られた.この値は大気圧液体窒素(0.1MPa,77K)中の値とほぼ同一であり,部分放電開始のW特性における圧力依存性が小さいことがわかった. (2)新しい絶縁材料の諸特性 我が国の国家プロジェクトとして進められている275kV高温超伝導ケーブルの絶縁設計においては,誘電損失が交流損失の3倍に達しており,次世代の高電圧/低損失高温超伝導ケーブルの開発に向けてコンパクト化(絶縁厚さ)と低損失化(誘電損失)を両立することが必要である.そこで,高絶縁性能を有するPPLP(ポリプロピレン積層テープ)-Ctypeと低誘電損失特性を有するTyvek(高密度ポリエチレン不織布)との複合段絶縁に着目し,それによる誘電損失の低減効果について検討した.その結果,PPLP-C層とTyvek層の絶縁厚さの割合を22%:78%とすることにより,275kV高温超伝導ケープルの誘電損失をPPLP-Cのみを用いた従来設計の33%に大幅に低減できることを明らかにした.
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